日本企業のマネジャーの約9割がプレイングマネジャーであると言われます。自分でも現業
を抱え込んでいるので、マネジメントの時間が十分に取れていません。一方で、マネジャー
は現業を離れるべきではない、つまりプレイングの部分で専門性を磨くことが重要だ、と
いう議論もあります。
さて、プレイングマネジャーのままでいいのでしょうか。
プレイヤー時代に実績を上げた成功者がマネジャーに昇格するのですから、「プレイング」
に自信を持っており継続したい気持は分かります。しかしその結果、「マネジメント」不在
のチームが出来てしまいます。これではチームの生産性は上がりません。
生産性、つまりビジネスの効率の視点からみてプレイングマネジャーから脱却すること
が有益であることは明らかです。マネジャーの役割は「プレイング」ではありません。
「マネジメント」なのです。
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ある部署に生産性が1.5のマネジャーと、生産性が1.0の4人のメンバーがいました。その
ままですと部署全体の生産性は5.5です。マネジャーがあるとき決意して自分の時間の3分
の1を「マネジメント」に振り向けたとしましょう。その途端マネジャーの生産性は1.0に
減少するので部署の生産性は5.0に減少します。
マネジャーは自分の3分の1の時間を使って、ふたりのメンバーの人材育成を始めます。
その結果それから半年後、ふたりのメンバーの生産性は1.5に向上しました。つまり部署
の生産性は6.0に増加したのです。
次の半年で別のふたりのメンバーの育成に取り組み,やはり1.5の生産性を上げるようになり
ました。こうして部署の生産性は1年後には7.0になったのです。つまりこのマネジャーは1年
後に部署の生産性を30%も増加させたのです。
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プレイングマネジャーが「マネジメント」に踏み切れない理由は任せられる部下がいない、
自分でやったほうが早い・・、などというものです。これらは言い訳に過ぎません。本当の
理由は「マネジメント」がよく理解されていないことです。マネジャーの責任である以前に
マネジャー育成に力を入れない企業が問われます。
「名プレーヤー、必ずしも名監督にあらず」
マネジャーとしていつまでもプレイングに関わり続けていないで、 早く「マネジメント」
に自信をつけて、組織の成果を上げていきたいものです。
(参考文献)
「プレイングマネジャーの教科書」伊庭正康 2019年 かんき出版